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体とお財布に優しい断熱等級は?

前回は、耐震等級3についてお話させていただきましたが、今回は住まいの「断熱性能」について、少しお話させていただきたいと思います。

 

「耐震性能」と「断熱性能」は、家という建築物に不可欠な性能です。なぜなら、皆さんの家族の『命』と『健康』に大きく関わるからです。

 

実際、断熱性能が上がると身体の不調症状が改善するという興味深い調査もあります。断熱性能と健康がどのように結びつくのか、調査データをもとに解説していきましょう。今後もし新築やリフォームをお考えなら、この記事を読むことで断熱性能の重要さや目指すべき断熱等級が理解できるはずです。

 

身体の不調改善と断熱性能の関係

 

下の表は、近畿大学の岩前教授が発表された資料です。

体とお財布に優しい断熱等級は?

これは、新築の戸建て住宅に転居した人を対象に、体の不調症状が改善するか調査した結果です。下の軸(3→4→5)が断熱性能を表しており、断熱性能が高い住まいに引っ越した人ほど、体の不調の改善が見られることが分かっています。

 

あたたかい家はヒートショックのリスクも下がる

 

断熱性が高くあたたかな家は、ヒートショックの心配もなくなります。言い換えれば、断熱性の低い家はヒートショックによる死亡リスクが高くなるのです。

 

ヒートショックは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす現象です。

 

例えば、暖かいリビングから寒い浴室やトイレに移動するなど、温度差が大きい場所に移動するタイミングでよく起こります。特に、高齢者や高血圧の人などはヒートショックが起こりやすいと言われているので要注意です。

 

意外に思うかもしれませんが、ヒートショックによる死亡事故は交通事故死の7倍とも言われているほど。

 

これで、断熱性能は命にも関わることがあるというのをご理解いただけのではないでしょうか。

 

また、ここからは余談ですが、寒い家に住んだことがある人は、寒いだけで家族のコミュニケーションがギスギスした経験もあると思います。

 

ヒヤっとするすきま風に「ドア閉めて!!」といった大きな声が響いて不快な空気になることも・・・もしかしたら思い当たる人はいるのではないでしょうか。断熱性能が高ければ、このようなコミュニケーションも不要なのです。

 

目標とすべき断熱性能の基準とは

 

今後、家を新築したりリフォームしたりする場合に、どのくらい断熱性能を目指したら良いのでしょうか。

 

もちろん目安は必要になりますが、国が決めている基準の半分程度を目指すのがベターです。

 

昨今、住宅の断熱性能を表す数値として「UA値」と呼ばれる基準があり、数値が小さいほど住まいがあたたかい・涼しいという状態がキープできます。

 

国交省の東京6地域(※)では、快適な住まいを実現する基準として0.87[W/(m2・K)]のUA値が基準となっていますが、この半分である0.46[W/(m2・K)]が「断熱等級6」に該当します。

(※東京6地域…東京を中心とした広域的な地域区分。言い換えれば、東京のような地域ということ)

 

加えて、非常に優れた断熱性能を持つ住宅の基準として「HEAT20のG2基準」というものがあります。東京6地域でこの基準の住宅を建てる場合、住宅の熱が外に逃げるのをぐっと抑えるために、断熱性能を示す数値を0.46[W/(m2・K)]以下にしなければなりません。

 

もしも断熱性の高い家の建築やリフォームを望んでいるなら、UA値の目標を0.46[W/(m2・K)]とすると良いでしょう。

 

断熱性能6を目指すべき理由


2025年以降、すべての新築住宅は「断熱等級4以上」が義務化されます。

 

2022年3月までは、最高等級だった「断熱等級4」は最低等級に。さらに、2030年には省エネ基準が引き上がるため「断熱等級5」が最低等級になりました。2022年3月までは最高等級だった等級4の家も、今後は既存不適格住宅のレッテルを張られることになります。

 

こうした意味合いからも「断熱等級6」を目指して住まいを建てるのがよろしいのではないかと思います。

 

最高等級がすべてではない

 

なかには、

 

「それだったら、最高等級の7を目指した方が良いのでは?」

 

…と考える方も当然いらっしゃるでしょう。もちろん、住宅にかける資金が潤沢にある方は、最高等級の断熱性能を目指すのが良いと思います。

 

しかし、建築資金が潤沢にある方ばかりではありません。特に昨今は建築資材が高騰しているため、コストパフォーマンスの面からしても「断熱等級6」を一番にお勧めします。

 

例えば「断熱等級4」から「断熱等級6」にかかるコストは、おおよそ100万円~150万円。「断熱等級4」から「断熱等級7」にかかるコストは250万円~300万円が目安です。

(間取りや、設備機器の選択によりコストは変わります)

 

次にランニングコストを考えてみましょう。

 

オール電化住宅において、冷暖房を間歇運転(一定時間で運転と停止を繰り返す)場合の電気代は、「断熱等級4」で約25万円/年、「断熱等級6」で約19万円/年、「断熱等級7」で約18万円/年になります。

 

そうなると「断熱等級6」の建築コストを改修できるのに約25年、そして「耐震等級7」は約35年かかるのです。

 

一見「断熱等級6」でも元が取れるのに25年かかるようでは、あんまり意味が無いのでは?と感じますが、どこの部屋に行っても室温の差を感じなくなる住み心地になります。

 

同じ条件で、エアコンを間歇運転から全館空調にすると電気代は約4万円/年も削減されます。すると「断熱等級6」で13万円/年、「断熱等級7」で12万円/年になるため、「断熱等級6」は11年~12年、「断熱等級7」は20年~21年で建築コストの元が取れる可能性があるのです。

 

もちろん、電気代は電気の使い方や家族構成家の大きさにもよりますので、一つの目安としてお考え下さい。

 

体とお財布に優しい住宅を考える

 

高断熱住宅は、冬はあたたかく、夏は涼しい快適な住まいを実現できるため、健康面にもうれしいメリットがあります。さらに、光熱費を大幅に削減できるのもポイントです。特に「断熱等級6以上」の高断熱住宅は、長期的に見ると建築コストを回収できる可能性もあります。

 

これを読んでいる皆さんも、体とお財布に優しい住宅について考えてみませんか。

 

体とお財布に優しい断熱等級は?