双峰のいえ
まるで山の奥地にある旅館を訪れたような佇まいのS様邸。趣味や旅行が人の心を癒すように、丁寧につくられた家の中で心落ち着く工夫が随所に散りばめられました。
想像力に満ちた設計のアイデア、伝統と気配りが生きた大工の技、そしてお施主様の思い描く理想が一つになって完成しました。
エアコン一台で夏も冬も快適に過ごせる、高気密高断熱の都市型住宅をご紹介いたします。
Detail
- エリア
- 東京都調布市
- 設計
- atelier oui宇佐美愛建築設計事務所
- 竣工年
- 2024年
- 建物概要
- 敷地面積 288.54㎡(87.28坪)
建築面積 98.52㎡(29.80坪)
延床面積 122.95㎡(37.19坪)
UA値 0.34 W/㎡K
C値 0.2㎠/㎡
耐震等級3(許容応力度計算)
床下エアコン+小屋裏エアコン
外壁/焼杉壁
内壁/ほたて漆喰・コットンクロス
窓/APW330
リビング・ダイニング
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玄関を上がると広がる和室。床板は「なぐり(名栗)加工」仕上げで。スプーンで無垢材の表面をすくったような、丸い窪みがあるのが特長です。光が当たると無垢の深みが広がり、木の表情が豊かに見えるのも魅力です。凸凹感が素足に心地よく伝わってきます。
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LDKは伸びやかな勾配天井です。南側に高窓を設けて光を採り入れました。床下エアコンを設置しているので足元からポカポカ。窓際に設けた腰掛けのベンチでゆっくりテレビをみたり本を読んだりしていただけます。自然の光と自然素材に包まれた、深呼吸したくなる空間。壁はホタテ漆喰で仕上げました。
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要所に散りばめられた壁面の間接照明が空間をより優しく演出してくれます。ほっと安心できるやさしい灯りも空間をデザインするアイテムのひとつ。
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丸太や板の表面に、道具の痕跡を残す、日本の伝統技術。自然木を通して表現された、ものづくりへの想いも、あたたかみに加わります。
キッチン
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キッチンを板張りで囲い、生活感をみせない工夫を。キッチン収納も同じ材木でつくることで統一感も生まれます。
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キッチンはシステムキッチンです。手元の立ち上がり部分にタイルを張り、スパイスラックにはアクセントに照明を埋め込みました。背面のキッチンボードは高さを合わせ、平行に伸びる吊り戸を設計。水平ラインのきれいな空間です。
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料理や家事の合間も、四方に広がる植栽を愉しめる設計。四季折々の景色を毎日の暮らしに取り入れることで、外の自然と調和する豊かな暮らしが実現します。
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食品や備蓄などをしまうパントリーをつくりました。家事の合間にちょっと腰掛けて植栽を眺めながら休憩できるカウンターも設けています。
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セミオーダーできるカウンターと鏡。フラットなデザインがシンプルで暮らしに溶け込みます。毎日のお掃除もさっと時短に。
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脱衣室にはガスの衣類乾燥機「乾太くん」を設置しました。家事の負担軽減やふっくらタオルがいつでも使える、忙しい家族のマストアイテム。
玄関
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吹き抜けがもたらす明るさと開放感。玄関入って左には、靴を履いたままでも使えるシューズクローゼットを設けました。来る人を魅了する、包容力豊かな玄関スペース。
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間仕切り壁に使用したのは、外壁で馴染みのある「サイディング」。丈夫かつデザイン性の高いサイディングは種類が豊富なので内装においても活躍の場が広がりました。やわらかい印象の天然木にクールな金属系がスパイスとなり、空間にメリハリが生まれます。
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2階への階段。階段下はすべて収納です。季節物の家電や普段は使わないものなど、見せたくないものは上手に隠すことでスッキリとした暮らしが保てます。
サイディング壁に付けた照明は、建築士「推し」のアイテム。 -
玄関からリビングにつながる通路。和室は障子で仕切れるので、いつでも個室として使うことができます。
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2階の吹き抜けから1階を見下ろした眺め。和の趣がありながら、どこか軽やかなリゾート気分も味わえるデザイン。
2階
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室内窓のサッシも扉も天然木。建具は天井まで目いっぱい伸びた、ライトで伸びやかな印象です。
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近隣の視線をさりげなく外した高窓で。照明もあえてシンプルに。調光にもこだわりました。
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2階に設けた本棚は、宙に浮いたデザインで。デザイン性を高めただけでなく、2階のエアコンの冷気が、自然に1階に降りていくよう工夫した設計です。本好きのS様ご家族が、本を片手に、脚を投げ出して読めるスペースを設けました。
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アピトン合板を四国の材木屋さんから入手してつくった階段。大工のこだわりで、階段一段一段の角を取りました。細部へのさりげない配慮が、家全体に優しさとぬくもりを与えてくれます。
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長さをチグハグにしたことで、空間にリズミカルな印象をプラスしました。
外観
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山の峰の様なシンプルな切妻屋根が仲むつまじく二つ並んだ愛らしい外観。
外壁は焼杉の「三角焼き」でオーダー。外観のデザインは日射を取り込みやすいL型で。プライバシーもしっかり確保していきました。 -
存在感のある焼杉の外壁に、オレンジ色の玄関引戸が映える玄関ポーチ。どんな植栽も引き立つ外観です。
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「駐輪場をつくりたい」と希望されたS様に「自転車小屋」をご提案。母家とはなれのような、まるで親子のような可愛らしい存在感。小屋の奥には物置スペースを。
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リビングからの夜景。ウッドデッキに腰をかけて、夜風をあびながらのんびりと過ごす贅沢な時間。小屋が通りからの視線もさりげなくカットしてくれます。
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灯りと植栽が建物を纏ってはじめて、家が完成します。「おかえり」といってくれているかのようなぬくもりのある外観は、どこから見ても印象的な、人の記憶に刻まれる特別感があります。